「自分ストーリー」って何?
ところで、「自分ストーリー」の説明が不十分なままでした。
これは文字通り、自分の物語です。
小論文とは自分の考えを書くものですね。
つまりは、自分のことを書く。
そして、自分のことを書くためには、自分とは何者かということに自覚的でなければなりません。もちろん、自分とは何者かだなんて難しい問いに正解はありませんよ。誰だってそんなことわからない。人間はどんどん変わるしね。だからこの問いに正解はない。
だから、このように考えましょう。
自分という人間は、いろんな自分である可能性を秘めてはいるんだけど、今のところそれは置いといて、今までの生活を振り返って過去の様々な場面における自分を客観視したときに、自分ってこういう人間なんだなという解釈をしてみましょうと。
そういう自己の解釈を下敷きにしながら、自分の物語をつくってみる。
自分はどういうことに興味や関心があるのか。
自分はどういうことを大切に感じているのか。
今後、どういう生き方をしていきたいのか。
こうした抽象的な方向性からはじめて、少しずつ具体的な内容を付加していく。そういう作業をしていく中で「自分ストーリー」は形作られていくと思います。
この「自分ストーリー」を土台にしていけば、自分の考えって見ええてくるんですよね。
こうやって、小論文で書く内容の下地が徐々に作られていくわけです。
何かのテーマについて論じるときに、自分の場合はこの方向性でいこうというのがあると楽ですよね。
テーマが変わるごとに意見の方向性を変えることなんて、普通はできない。大人でもできない。ましてや高校生には無理です。それなのに、テーマが変わるごとに別の自分に変身してそのテーマにあった意見を言おうとしてしまう。そんなことできるはずがない。
自分の場合はこの方向性でいこうというのがあると、論述の「基本パターン」を作ることができる。
どんなテーマがきてもこの「基本パターン」にそって考えてみればいい。軸がぶれにくくなるので、文章自体がしっかりしたものになってくるはずです。
で、「基本パターン」は複数あったほうがいいし、可能な限り枝葉を広げて体系化できればなおいい。もちろん、そこまでできなくても「基本パターン」があれば、「自分語り」がしやすくなりますね。
だから、受験校のレベルに合わせてカスタマイズしていく必要はあるんだけど、基本的な考え方はいっしょです。
どんな学校を受験するのであれ、どんなテーマが出題されるのでこあれ、小論文では「自分とはこういう人間である」ということが表現できればいいんですから。
ここで最初に戻りますが、「自分ストーリー」を作る意味をちゃんと理解することがなぜ大切なのかおわかりいただけたでしょうか。
このことをできるだけかみ砕いて、生徒にもわかるように説明しなきゃいけない。
そんなに簡単なことじゃないですよね。
わたしもまったく手探りの状態です。だからこうすればいいという方法論はありません。
でも、ここが大事だということはわかりました。30年近くかかってやっとわかりました。
これは若い先生方への贈り物です。ここに宝が眠っているぞっていうことだけは示せました。宝の掘り出し方は難しいんですけどね。
どうでしょう。みんなでよい方法を考えていくことができればいいですね。
わたしもこのブログを通してもうちょっと考えていきます。よい考えがあったら教えてくださいね。よろしくお願いします。
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コメント
コメント一覧 (3件)
[…] それで、「適性」っていうのが大事になってくる。ほかの誰とも違う自分っていうのを作り上げていくことが大事になりますからね。そのためには自分には向いていないようなことを無理してがんばるよりも、自分に合った分野に力を注いだ方がいいに決まっている。そうすれば、より効率的に「個性的な自分づくり」が可能になりますからね。好きなことなら比較的苦にならないはず。じゃあ、自分には何が向いているの? 自分は何に興味があるの? 自分の適性って何? という話になってくるんだけど、その答えを出すのって意外と難しいんですよね。自分のことなのに自分は何がしたいかっていう問いにうまく答えられない。なんかぼんやりと宙に舞っているようなイメージみたいなものはあるんだけど、うまく整理できていないままこれまでほったらかしにしてきたもので。でも、とりあえずなにか答えを出さないといけない。そうしないと何も始まらない。だから、間違った答えを出しちゃうかもしれないけど、それであとで修正が必要になっちゃうかもしれないけど、とにかく何らかの答えを出さないといけないんです。わたしが何度も言っている「自分ストーリー」っていうのは、そういうことも含んでいるわけです。自分の物語を作り上げていくわけですからね。その過程において当然「適性」っていうことも必要な要素として入ってきます。(「自分ストーリー」についてはー実践編ーで説明しています)自分の適性やら興味の方向性やらがある程度見えてきたら、そのストーリーに沿ったかたちで自分の進路を考えればいい。進路についてはそういう順序で考えさせるのがいいと思うんです。でも、ここまで話してきたことを高校生に理解させてそれを実践させるのってめちゃくちゃ大変ですよね。生徒も大変だけど、先生もね。なので、できるだけ早めにそのスタートをきるのがいいと思います。走り出してしまえば、あとは自分で考えることが多くなりますからね。それで、人によっては「あれ? なんか違うかな?」なんて感じで途中で気づいたりします。そうしてまた振出しに戻って自分ストーリーを組みなおしてみる。自分の本当の気持ちと対話しながら、自分の物語を再編成していくんですね。そう考えると一度間違った方に突っ走る経験をした方がいいかもしれませんね。その方が内省的になって、しっかりと自分に向き合えるかもしれません。こんな感じで自分の適性みたいなものをちゃんと意識する機会を持つことが大事なのかなと思っています。 […]
[…] 「自分ストーリー」というのは、文字通り「自分の物語」です。小論文というのは基本的に自己表現です。そこに「自分」が表現されていることがいちばん重要です。じゃあ「自分」とは何か。それは自分の考えであり、自分の思いであり、自分の将来のビジョンであったりします。こうしたことが表現されているような小論文は優れた小論文と言っていいでしょう。小論文のお題は何が出るかわかりません。自分の受ける学科とは直接関係の内容なことが問われることだってあります。それでも、しっかりと設問要求を満たしながら自己を表現する。そうした力が必要なわけです。こう書くとそんな難しいことできない!って思われるかもしれませんが、そんなことはありません。自分の考え方を支えている「土台」さえしっかりと作ることができればどんな生徒にも十分可能なことだと思っています。その「土台」の大本にあるのが「自分ストーリー」です。「自分ストーリー」の作成とは、これまでの自分の歩みを振り返りながら、自分という人間を再構成し、再認識する。そういう作業です。この作業は、絶対に必要な作業です。けれども、高校生が自力でできることではありません。だから、どうしても先生のサポートが必要です。関連記事→初級編③・初級編④・初級編⑤・初級編⑥・初級編⑦・初級編⑧ つぶやき編⑤・つぶやき編⑥ […]
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