1 文が長くなる理由

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短い文は難しい

論理的思考が必要

私たちは昔から文は短く書くようにと教えられてきました。
それで分かったような気になって書き始めてみるのですが、いざ書いてみるとどうも思うようにいきません。
短い文をなら簡単だろうと軽く考えていたのに、気がついたら文が長くなってしまいます。
それで、どうも自分には文章の才能がないと諦めてしまう人が多いようです。

しかし、短い文を書くというのは実はけっこう難しいことなのです。
言いたいことがはっきりしていて、その結論に持っていくまでの展開があらかじめイメージできていないと端的な表現にはなりにくい。

つまり、論理的な思考ができていないと、文章はダラダラと長くなっていきます。

「書く言葉」が必要

それでは書くのが不得意な人は論理的思考が苦手なのかというと、決してそういうわけではありません。

例えば、ある高校生は作文は苦手でも、数学の証明問題は得意です。別の生徒も文章は下手でも、プログラミングならプロ級の腕前だったりします。

彼らがそれぞれの分野で高度な論理的思考ができているのは、普段とは違う言語、つまり「数学の言語」や「プログラミングの言語」を使っているからです。

同じように、文章を書くためには普段とは違う言語、つまり「書く言葉」を使わなければなりません。

数学ができるのに書くのが苦手なのは、「ふだんの言葉」のまま書いているからです。
失敗の原因はここにあります。

どんな分野でも、論理的に思考するためにはそれ専用の言語が必要なのです。

日常語のクセはなかなか抜けない

日常会話のような文章になる

それでも私たちはつい「ふだんの言葉」のままで文章を書いてしまいます。
すると、それが文章にも影響します。

例えば、商談では、相手の顔色を伺ったり場の雰囲気を気にしたりすることが多くなります。すると、言いたいことがあってもストレートに表現するのは難しくなり、目的の地点につくまでにいろいろと迂回したり寄り道したりすることになります。
家族や友達との会話などは、そもそも端的な表現が求められていません。基本的にはその場で思いついたことを口にするだけです。話題は、あたかも連想ゲームのように横へ横へとスライドしいきます。

これが「ふだんの言葉」です。決して論理的ではありません。
この言葉で文章を書いたら、同じような感じになるのは当たり前です。

まわりくどい文章。
ごちゃごちゃとした文章。
最初と言ってることが違う文章。
結局何が言いたいのかよくわからない文章。

こうした文章を書いてしまうのは、「ふだんの言葉」の影響だと思われます。

「ふだんの言葉」がダメな理由

第一に、「ふだんの言葉」では物事を十分に説明することはできません。
私たちのふだんのコミュニケーションというのは、言葉以外の多くの情報の助けを借りて成り立っています。
例えば家族と話すとき、私たちは言葉以上に相手の表情や身振りや仕草などを注視しています。友達との会話もやはり同じです。相手の表情や何とも言えない「間」などが言葉以上にものを言います。
そうした「言葉以外の助け」を借りることではじめて私たちは気持ちを伝え合うことができています。言葉だけでは不十分なのです。

第二に、「ふだんの言葉」は限定された人にしか通じません。
私たちがこれまで関わってきたのは、「自分のことをよく知っている人たち」ばかりです。家族はもちろんのこと、学校の友達、先輩、先生、会社の同僚などなど。
こういう人たちは、「すべてを語らなくてもわかってくれる」ありがたい人たちです。
説明が足りなかったり、話があらぬ方に飛んだり、辻褄が合わないことを言ったりしてもちゃんと伝わっていたのは、それが「ふだんの言葉」が通じる狭い世界の中のことだからです。

こうした「ふだんの言葉」は、公的な文章には決定的に向いていません。

文章の世界とは

1、文章では、身振りや表情などが使えない。
2、文章は、自分のことをよく知らない不特定多数の人に向かって発せられる。


「ふだんの言葉」は、さまざまな「助け」があって初めて成り立つ言葉でした。
しかし、文章の世界というのはそうした助けがまったく期待できない完全アウェイの場所です。
そこでは「書くための専用の言葉」がどうしても必要になります。

それなのに私たちは「ふだんの言葉」を使って書こうとしてしまいます。そしてこの言葉で十分説明できると信じて疑いません。
これは、ほぼ無意識のレベルなので、なかなか改善されないのです。

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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