⑨先生が読むべき小論文参考書3選

E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。

本屋さんに行けば小論文参考書ってたくさんありますよね。どの本も良さそうで目移りしちゃいます。でも、そうした本のほとんどは高校生に向けて書かれたもの。当たり前ですけどね。そうした中で、先生にも是非読んでもらいたいと思う本を選んでみました。指導者目線で読んでみてください。小論文指導の際にきっと役に立つと思います。

 



小論文の参考書については以前の記事で取り上げました。
(以前の記事はこちら

内容を要約すると次のような感じです。
1 小論文の参考書はとても有用だ。
2 でも、上手に使いこなせる生徒はあまりいない。

特に、「普通の高校生」にとっては難しすぎるかもしれません。
本に書いてあることの意味自体は分からなくはないんですけどね。
その通りにやってみようと思ってもうまくいかない。

力量不足なんです。
ほとんどの高校生は。

ある程度の基礎力が備わってる生徒じゃないと参考書を使っての自学自習は難しいんんですよね。
そういう意味では、受験参考書は使用者を限定していると言えます。

だから「普通の高校生」は先生と一緒に考えていくのがいちばんいいと思う。

そうなると、指導する先生の方に指導方針というか指導計画というか指導イメージというか、そんな感じのものが必要になってきますね。
これについては実践編で紹介していますのでよかったらご一読ください。
(実践編①はこちら

で、今回は先生に読んでもらいたい小論文の参考書を紹介します。

が、今回紹介する本は、厳密には小論文の参考書というカテゴリーには入らないかもしれませんね。
少なくとも、著者は受験参考書というつもりでは書いてないと思います。

ここに書かれているのは、「小論文を書くとはどういうことなのか」ということです。
どうすれば自分の意見というものを構築できるのか、どうすればそれを上手に文章化することができるのかということについて書かれています。

ですから、これは大学受験という枠組みにはとどまりません。
大学で学問をする際に必須のスキルになりますし、その先の人生のさまざまな局面においても役に立つ武器になり得るものです。

高校生がその先の長い人生を生き抜いていくうえで必要とされるスキルですね。
これをしっかりと自分のものにできるようにという思いを込めて書かれた書物です。

ただし、「普通の高校生」が自力でこの内容を理解するのはちょっと難しいかな。

だから、まず先生が読んでください。
そして、小論文指導をする際の根っこのところにこの考え方を置いておくのがいいと思います。

もちろん、現実的には目の前の大学入試がありますから、これにパスできるかどうかが最重要項目だとは思います。だから「その先の人生」みたいなことは理想論に聞こえちゃうかもしれません。

でも、入試小論文というハードルを越えるという経験をすることが「その先の人生」に生きてくるのは事実ですし、大学側もそうしたことを期待して小論文入試を実施しているわけですからね。

その辺の構図は、生徒には理解しがたいことだとしても、先生はわかってなきゃいけない。
それをわかっいて指導するのと、そうじゃないのとでは大違いですからね。

目次

①小論文書き方と考え方 大堀精一

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★☆☆
先生におススメ ★★★★★
生徒におススメ ★★★☆☆

この本はいいですよ。
何がいいって、全然高校生に媚びていない。(笑)

だいたい、色味がないからね。新書を読んでいるのとほぼ一緒。
読むまでもなく難しそうオーラが溢れています。

大堀先生! 
これじゃ普通の高校生は買ってくれないよ!(笑)

明らかにある一定レベル以上の生徒層に向けて書いていますよね。
さすがです。

でも、中身をよく読んでみるとそんなに難しいことは書いてないんですよ。

基本的でとても大切なことを丁寧に説明してくれています。
こういうことがちゃんとわかっている生徒は強いです。

学力の高い生徒ならこれを読めば独学でもいけるんじゃないかな。

そこまでじゃない「普通の高校生」にも読んでもらえたらいいんだけどね。
やっぱりそれは難しそうなので、先生にお願いするしかないかな。

いずれにしてもこれはぜひ読んでもらいたい本です。
高校生にも、先生にも。

この本のさらに詳しい解説はこちら

②大学生の論文執筆法 石原千秋

《おススメ度》
読みやすさ    ★★☆☆☆
先生におススメ ★★★★★
生徒におススメ ★★☆☆☆

これは受験参考書じゃないね。(笑)

でも、基本的な考え方は一緒です。
大学で書くレポートや論文も、入試小論文も。

どちらも押さえなきゃいけないポイントは同じ。
論点を明確にし、自分なりの切り口で、根拠を示しながら、丁寧に書く。

特に二項対立の構図を意識して構成を考えるというもの。

「普通の高校生」にはちょっと難しいかな。

でも、二項対立の文章をうまく書けなかったとしても、その理屈はわかってほしいよね。
少なくとも先生はちゃんと理解しておくべきです。

著者は石原千秋さん。
私が大学生のころ、新進気鋭の若い批評家としてブイブイ言わせてましたね。
今から30年以上前かな。

とにかく新しい時代を切り開くんだという意気込みがすごかったよね。
この時代は浅田彰とか中沢新一とかのいわゆるニューアカデミズムの勢いもあったしね。

そうした本は一応買いましたよ。
ハードカバーの本ばっかりでね。また、値段が高いんだこれが。
でも、大学生の私にはほぼ理解できないことばかりでした。

今回紹介する本も、けっして読みやすい本ではないかな。
だから、先生が読んでくださいね。

この本のさらに詳しい解説はこちら

③自分だけの物語で逆転合格する総合推薦入試 竹内麦村

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★★★
先生におススメ ★★★☆☆
生徒におススメ ★★★★☆

これは受験に特化した参考書ですね。

ターゲットがはっきりしているところがいいですね。
偏差値が高い生徒を相手にしてるわけじゃないよって。
それでもハイレベルの大学に合格できる方法を教えますって書いてある。

ホントかな? と思って読んでみると、うんなるほどねってことが書いてますね。
もちろん、偏差値50前後の生徒が慶応大に合格するっていうのはレアケースだとは思いますが、もしかしたらいけるかもて思えるところがいいと思います。

このブログでも何度か書きましたが、小論文入試の取り組みって実際に文章力が上達するっていうことももちろん大事なんだけど、それと同じくらい生徒の納得度っていうのも重要なんですよね。
入試に向けてできる限りの準備をすることができたという実感を持てるかどうか。

そういう意味ではこの本に書かれている方法論は生徒にとってわかりやすいものになっているし、先生もこれに乗っかれば指導しやすいんじゃないかな。

とてもいい本です。
でも、Amazonとか楽天とかで検索かけてもあまり上位にあがってこないんだよね。
どうしてだろう?
いろんなブログを見てもこの本を勧めている人はあまり多くないしね。

実際に読んでないんじゃないかな。
ネットの評判だけで判断してしまう傾向ってあるからね。ある流れができちゃうと大したことない本でも上位にあがってきてしまうんでしょう。

でも、この本はおススメですよ。

この本のさらに詳しい解説はこちら

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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小論文参考書の解説① 『小論文書き方と考え方』 大堀精一 | 文章練習室 さくら へ返信する コメントをキャンセル

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