E-roomへようこそ。このブログでは小論文と上手に付き合っていくための方法や考え方について、学校の先生や受験を控えた高校生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。
「わくわく小論文作戦会議-初級編ー」の内容を整理してみました。わたしのブログでは先生が生徒に指導する際のポイントを説明してきました。このページでその全体像を確認してください。その上で各項目に関する関連記事を読むと(少しは)分かりやすくなるかなと思います。
はじめにひと言
普通の高校生が独学で小論文を書くのは難しい。
先生による個別指導がある程度は必要だ。
これがわたしの基本的な考え方です。
それでは、どの程度までどのように指導すればいいのか。
難しい問題ですよね。
結論を言うと「生徒による」という感じでしょうか。
だから、万人に通用するような「鉄板の小論文指導法」みたいなものはないと思っています。
考え方も能力にも個人差がありますからね。
その子に合わせて指導の仕方も変えていく必要があります。
当たり前のことですけどね。
それでも、ある程度のところまでは多くの生徒に共通してやっておいた方がいいかなと思うところがあって、それをまとめてみようかなと思いブログを立ち上げてみたわけです。
教員生活も30年近くなりましたしね。たくさんの失敗やいろんな経験を積み重ねてはきましたので、少しは若い先生の役にでも立てればなと、ふと思ったわけです。
遺言みたいなものですかね。
誰かにとってのいい贈り物になればいいかな。
そんな感じです。
それで記事を書き始めたわけですが、書きながら「これじゃうまく伝わらないよな」ということが多々ありましてね。私自身の文章力の限界を感じながら、それでも何とか書き進めてきました。
読みにくい部分やわかりにくい内容があるかとは思いますが、ご容赦くださいね。
何か質問がありましたら、いつでもどうぞ。「お問い合わせ」のメニューもありますので。
わくわく小論文作戦会議スタート!
「わくわく」というのは文字通りわくわくしながら取り組んでほしいという意味です。
生徒も先生も。
実際面白いですよ。
生徒の考えをいっしょに掘り下げていくと、その子の考えていることはもちろんのこと、家族や友人や趣味や過去の出来事や将来の夢など、いろんなことが見えてきます。
この子はこんなこと考えてきたんだなと思って楽しくなります。
生徒も自分のことを話しながら何か楽しそうです。
あんなこともあった、こんなこともあったっていう感じでね。
気持ちが乗ってくるとどんどん出てきます。
若い人の語る「夢」みたいなものを聞いていると楽しくなりますよね。
それが非現実的なものであったとしても、なんかキラキラ目を輝かせながら語ったりしますもんね。
生徒以上にこっちが「わくわく」してきたりします。
若いっていいなー
基本的には生徒の考えを肯定的にとらえましょうね。
これは結構重要なコツです。
現実の厳しさを教えたり、路線の変更を提案したりするのはいつでもできます。
そういうのは生徒との信頼関係ができてからじゃないとね。
そのタイミングを誤ると、失敗します。
最初は信頼関係づくりが大切だと思います。
生徒のこれまでの歩みや今後のビジョンを肯定的にとらえながら、たのしく作戦会議をしていきましょう。
関連記事→ 初級編①・つぶやき編①・つぶやき編②
まずは何か書いてみよう!
これまで小論文を書いたことがないっていう生徒は意外に多い。
はじめて小論文を書くなんていう生徒は不安な気持ちでいっぱいです。
それで「どう書けばいいか」っていうことを知りたがるんですよね。
いわゆる「小論文の書き方」ってやつです。
でも、最初はそんなこと考えずに、好きなように書いてもらった方がいい。
理由は二つあって、
一つは、この段階で「小論文の書き方」を教えてもほぼ意味がないっていうこと。
書き方なんていうものは、書く内容が見えてくれば自然と身についていきます。
今はその段階ではないし、仮に書き方を教えたとしてもうまく書けませんからね。
二つ目は、最初に「材料」集めをしたいから。
「材料」というのは、その子の「自分ストーリー」を作るための材料です。
その生徒が考えていること、大切に思っていること、過去の出来事、将来の夢、などなど。
とにかく、その生徒の頭や心の中にあるものをできるだけ引き出していきたい。
そうした「材料」は多ければ多い方がいい。
それを使って「作戦会議」をしていきます。
「小論文」の形になるのはまだまだ先の話です。
関連記事→初級編②・つぶやき編②
「自分ストーリー」を作っていこう!
「自分ストーリー」というのは、文字通り「自分の物語」です。
小論文というのは基本的に自己表現です。
そこに「自分」が表現されていることがいちばん重要です。
じゃあ「自分」とは何か。
それは自分の考えであり、自分の思いであり、自分の将来のビジョンであったりします。
こうしたことが表現されているような小論文は優れた小論文と言っていいでしょう。
小論文のお題は何が出るかわかりません。
自分の受ける学科とは直接関係の内容なことが問われることだってあります。
それでも、しっかりと設問要求を満たしながら自己を表現する。
そうした力が必要なわけです。
こう書くとそんな難しいことできない!って思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
自分の考え方を支えている「土台」さえしっかりと作ることができればどんな生徒にも十分可能なことだと思っています。
その「土台」の大本にあるのが「自分ストーリー」です。
「自分ストーリー」の作成とは、これまでの自分の歩みを振り返りながら、自分という人間を再構成し、再認識する。
そういう作業です。
この作業は、絶対に必要な作業です。
けれども、高校生が自力でできることではありません。
だから、どうしても先生のサポートが必要です。
関連記事→初級編③・初級編④・初級編⑤・初級編⑥・初級編⑦・初級編⑧
つぶやき編⑤・つぶやき編⑥
「土台」を固めよう!
「自分ストーリー」を踏まえながら、「土台」を作っていきます。
「自分ストーリー」と「土台」は何が違うかって?
あまり大きな違いはありません。
ただ、「土台」といった場合は、小論文を書く上での「思考の基礎」になるものを指しています。
自分の考え方の方向性であったり、考えの中心になっている重要な思いであったり、そうしたものが「土台」になっていくと思います。
こうした「土台」は、その子のこれまでの歩みの中から作られるべきものです。
じゃないと、その子の「本心」になりません。
小論文には論理性が大事だと言われます。
説得力も大事だと言われます。
でも、普通の高校生って、論理性やら説得力やらを駆使できるほど高い能力を持っていないんですよ。
それが現実ですからね。
だから、論理性とか説得力とかいっても、頭の中でうまいこと組み立てていくような芸当なんかほとんどの場合できない。できるわけがない。
本や新聞なんかで聞きかじった「プロの意見」をうまいこと「自分の考え」に組み入れて論理的に表現するなんてことは一部の優秀な生徒ならできるかもしれないけれども、ほとんどの生徒にはできない。
だって、その「プロの意見」をちゃんと理解できていないし、その意見に賛同してもいないだろうから。
思ってもいないことを文章化するなんて高度な能力を持ち合わせている高校生はそうそういません。
じゃあ、高校生が持ちうる説得力って何かっていったら、その子自身が「本当にそう思う」っていう本心からしか生まれないと思うんです。
それは自分が実際に経験したことから学んだことだったり、強烈に影響を受けた誰かの言葉や思想だったり。
そうした「本心(=本当にそう思うという気持ち)」と紐づけられる形でしか説得力は生まれようがない。
これは能力の問題というよりは、人生経験の浅い高校生なら当たり前のことだと思うんです。
だから、「自分ストーリー」の構成にじっくりと時間をかけてほしいんです。
その上で「土台」を作っていく。
そういう基礎固めがとても重要になると思います。
関連記事→ 初級編⑨
自分の「型」を作っちゃおう!
「土台」ができたら、そこから意見を発信していくことになります。
まずは自分が受験する学部学科に深く関連するテーマに関して自分の考えを作ってみる。
これには入試過去問を使って練習するのがいいでしょうね。
場数を踏んでいけば、自分が「語れる内容」や「語るべき内容」というのが見えてくるはずです。
そうするとある一定のパターンが生まれてきます。
これが「自分の型」です。
一度「自分の型」ができてしまえば、どんな問題が出題されてもだいたい同じようなことを毎回書くという感じになります。
もちろん試験が違えば問題文が違いますし、設問も違う。
だから、答えがまるで同じになるなんていうことはありません。
でも、答える内容の質というか方向性みたいなものはいつも似たり寄ったりになるでしょうね。
だって一つの「土台」から発信しているんですから。
同じような感じになって当たり前です。
で、それでいいと思います。
どんな問題にぶち当たっても、毎回同じようなことを言う。
考えてみれば我々だってそうですよね。
いろんな社会問題に関して意見を述べなきゃいけないようなとき、教師という立ち位置から発言します。
そこが我々の土台ですから。
教育問題ならもちろんそうですし、環境問題やら人権問題やら民族紛争やら経済格差の問題やらいろんな問題について我々教師は教育者の立ち位置から発言するはずです。
だって専門の学者ではなく、学校の先生なんですから、我々は。
そうすると、どんな問題に関しても、発言する内容の核の部分はだいたい同じになりますよね。
いろんな社会問題と教育を紐づけて考えていく。
社会問題の内容は違っても、その問題を解決するための糸口だったり、問題の切り口だったりというのはだいたい同じになりますよね。
だって我々の「土台」というか根っこの部分はもうかなり固まっていますから。
ある特定のパターンが仕上がっています。
高校生が自分の意見を述べるという場合も、基本的にはこれと同じ構造になると思います。
でも、ほとんどの生徒は「自分の型」を持っていない。
それは自分をしっかりと掘り下げていくという作業をしていないからです。
自分の考えや信念や適性みたいなものを見つめなおすという作業ができていない。
だから「自分ストーリー」も作れない。
そういう意識がないから基礎となる「土台」ももちろんない。
「土台」がないところから何らかの意見を発信するというのは無理というものです。
適当なお茶濁しみたいなことは書けても、そこに「自分」というものを表現することはできない。
だから小論文が書けないんです。
書けないのは文章力の問題ではなく、自分を見つめていないからなんです。
それができているならば、多少稚拙な文章になったとしても「自分の文章」が書けます。
超難関大の入試以外ならば、このレベルで十分戦えるはずです。
関連記事→初級編⑩・初級編⑪・初級編⑫・初級編⑬
バリエーションを増やそう!
「自分の型」がある程度できてきたら、問題の性質に合わせてカスタマイズしていけばいいと思います。
いろんな入試問題で練習していくと、カスタマイズの仕方なんかも見えてくると思いますよ。
もちろん、この段階まで来ることができるならば、それはかなり優秀な生徒です。
ですから、ほとんどの高校生は「カスタマイズ」のレベルまでには到達しないと思います。
でも、それでいいと思います。
自分のレベルにあった学校を受験してくれさえすれば、平均点以上の小論文は書けるようになるのではないでしょいうか。
さらにスキルを伸ばしたいというのならば、「自分の型」を複数持てるようにすればいいと思います。
そうすれば、様々な問題に対してより柔軟に対応できるようになりますし、そうしたスキルを習得していく過程の中でさまざまな社会問題についての知識も蓄積されていくでしょうから、ハイレベルの入試にも対応できるようにな論理性が身についていくと思います。
関連記事→初級編⑬
参考書も活用しましょう!
小論文の参考書は使い方さえ間違えなければ大変有用なアイテムです。
参考書によって使い方は違ってくると思いますので、その辺のところは先生がしっかりとアドバイスしてあげたいものです。
「はじめに」で書いたように、基本的には小論文の独学は難しいと思います。
だから、参考書を活用する場合でも、先生が指導するという基本線があった上で活用するのがいいと思います。
また、参考書は生徒に読ませるよりも、先生が勉強のために読んだ方がいいと思います。
小論文の指導方法には様々なバリエーションがありますから、それを先生が学んでいく。
そして、それを生徒に還元していく。
そういう使い方が最も効果的だし、生徒にとっても有益なんじゃないかなと思います。
関連記事→つぶやき編⑨・つぶやき編⑩


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