⑧参考書とのつき合い方2

E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。

いい参考書ってたくさんありますよね。でも自分に合った一冊を選ぶとなるとすごく難しい。そんな悩みを高校生の皆さんは抱えているはずです。そんなとき、先生としてはどんなアドバイスができるんでしょうか。ふだん感じていることを思いつくまま話してみたいと思います。



目次

いい参考書はどれだ?

最初に、大前提となることを確認しておきますね。

小論文の参考書はとても有用である。

ほんとうにどの参考書もさすがよくできてます。小論文を書くのに必要なことがしっかりと盛り込まれている感じ。

これはチームで作成しているからなんでしょうね。もちろん中心となる執筆者はいらっしゃるでしょうが、一人じゃ作れませんからね。出版社や予備校などのサポートメンバーがしっかりと支えているんでしょう。いろんな人の意見を取り入れているから、どの参考書も完成度が非常に高い。


本屋さんに行くとずらーっと並んでます。良さそうな参考書が。

でも、あの中から一冊を選ぶのって大変じゃないですかね。
どれもよさそうに見えますよ。全部買うわけにもいかないしね。

われわれ教員ならば、それなりの選択基準っていうのがあるけど、高校生はどうなんですかね。

どうやって選んでるんだろう?

今だったらネットの評判とかSNSとかで情報を集めたりしてるのかな。
慶応に合格した○○先輩おススメの参考書とか。わたしたちの時に比べて圧倒的に情報量が多いですからね。便利と言えば便利。

それにしてもね。実際に手に取ってみると迷うんじゃないですか。
結局使うのは自分だから。
他人の推薦は参考にはなるけど、実物を見たらなんか気に入らない感じがしたり。色合いがどうも…とかね。
うーん、どの本にしようか…。

結局は、「なんか自分にもできそうかな」と思うのを選ぶんだよね。
つまりはフィーリングです。
なんか嫌だなとか、なんかいいなとか。
しっかりとした選択基準がないから、感覚的なものの方が勝っちゃうよね。
その時には○○先輩の顔はもうどっか行っちゃってる。SNSの情報も役に立ったのかな?

そう考えると、あんまり変わってないみたい。われわれの頃と。
で、家に帰ってさあやるぞって気合を入れるんだけど、3ページくらい読んで挫折するんだよね。そして使えない参考書だー、失敗したーって騒ぐんです。
それも変わっていない。

誰にとってもいい参考書っていうのはないからね。
やっぱり使ってみないとわからない(使ってもわからないかもしれないけど)。
○○先輩にとってはいい参考書だったかもしれないけど、自分にはうまく使いこなせないなんてことはよくあることです。無駄な出費も勉強のうちだよね。こればっかりは仕方がない。

参考書はどれでもいい?


生徒からの質問もけっこう多いですよね。
「どの参考書を買えばいいですか」って。

困りますよね。
言ってしまえば、
どの参考書だろうが、ちゃんとやれるならばどれでもいいので。

だから、「この子はどの参考書ならちゃんとやれるのかな」っていう視点で考えてアドバイスするしかない。

んー、君ならこの参考書より(これはちょっと難しいので)、こっちの方がいいんじゃないかな(イラストで解説してくれてるし、カラフルで楽しそうだし)。
っていう感じ。

なんか生徒を適当にあしらっているように見えるかもしれないけど、まずはこんな対応でいいかなって思ってます。

だって、そもそも参考書を読んだだけで小論文が書けるようになるなんてことはほとんどありませんから。

だから、参考書についての質問にはとりあえず何らかの返答はするけど大事なのはそこじゃない。

まずはその参考書を使いこなせるようになるための「基礎体力」づくりをしなきゃ。

「基礎体力」づくりのお手伝いをするから、いっしょにがんばろうね。
そんなふうに生徒には言ってます。

参考書を使いこなせる生徒はほんの一部

こんな例えはどうでしょう。

にんじんと玉ねぎとじゃがいも、そしてお肉。
これだけの材料を持っていたら、すぐにカレーライスを作れるようになるでしょう。
「カレーの作り方」とかいうレシピを見せさえすれば、あとは自分で必要なものを揃えて、ちゃちゃっと作っちゃいます。
優秀な生徒ってこんな感じですよね。
参考書を与えれば、その内容をすぐに理解して、すぐれた文章を書けるようになる。
なんて楽なんでしょう。

でもほとんどの生徒はそうじゃない。
もともと持っている材料が少ない。
あるいは変なものしか持っていない。
セロリとか、納豆とか。

こういう生徒にはレシピを見せるだけでは無理です。
決してカレーライスにはならない。
カレーを作るのに必要な材料は何かとか、その集め方とか、そもそもカレーライスって何かとか。
レシピを見る前に教えなきゃいけないことが山ほどある。

どのレシピがいいかって迷うこと自体はいっこうに構わないけど、まだその段階じゃないからね。

だから、レシピは何だっていい。
まあ、この子だったら将来的には野菜カレーが向いてるかもなという感じなら野菜カレーのレシピをとりあえずは勧めておきますけどね。別のだって全然かまわない。

今やるべきことは「基礎体力づくり」です。
そのことを生徒には理解してもらう。

ある程度の体力がついたら、参考書に書いてある内容も理解できるようになるんじゃないかな。

そういう段階をちゃんと踏むことができたら、参考書はその生徒にとってものすごい武器になると思います。

参考書自体は、どの参考書もものすごくよくできているので、どれを選んでもいいんじゃないですか。
自分のお好みでどうぞご自由に。

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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