②こんなにレベル低い⁉

E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。

生徒の書く文章があまりにひどくてうろたえてしまった経験はありませんか。もうどこから直せばいいのかわからない! そんなとき、生徒の文章とどう向き合えばいいのでしょうか。ゆっくりと考えていきましょう。

 



目次

生徒の文章に驚くな

先生、ちょっといいですか。
わたし、こんど○○大学の推薦入試受けることになりまして。
それで、入試科目に小論文があるんです。
わたしの小論文、見てもらえませんか?


よくある光景ですね。

ほうほう、○○大学の推薦ね。
どれどれ、これが過去問ね。
ああ、これならそんなに難しくないよね。
とりあえず去年の問題をやってみようか。
明日まで書いてこれるかな?


はい! がんばります!

快く引き受けてもらえて、生徒はニコニコです。

生徒からしたら、若い先生の方が頼みやすいしね。
ちゃんとかまってくれるし。
わがままも聞いてくれそうだし。

おじさん先生だったらこうはいきません。
すぐ怒られちゃうもんね。
おまえ看護志望なのにこんなことも知らないのか! とか。

わざわざ怒られになんかいきたくないよね。


その点、若い先生なら安心です。



先生の方もがんばっちゃうからね。

よし、いい小論文書かせるぞ!
志望校に合格させるぞ!


入試リサーチもまめに行います。

○○大学の偏差値は、52か。
推薦の定員は50人。
去年の倍率は1.2倍。おととしは1.4倍。
入試科目は、小論文と面接。あとは推薦書と調査書ね。
で、この子の評定平均値は4.2。
バレーボール部のキャプテンか。
これはいけるでしょ。
笑顔はかわいいし、言葉づかいも丁寧だ。
あとは小論文さえそこそこ書けたら絶対に合格できる!


勝ち戦確定の楽勝ムードです。

しかし、
次の日、愕然とするんですよね。

なんじゃこりゃー!!!!!!
これは誰が書いたんだ?
この子の妹か? 妹は小学4年生くらいなんだな。
そうだ、そうに違いない。

テーマは、「志望理由」だぞ。
おい、何の話をしているんだ?

ずいぶん部活の話書いちゃったのね。
バレー部の部長、がんばったんだ。そうか、そうか。

お? 今度はおばあちゃんが出てきたぞ。
ああ、おばあちゃんが看護師だったのね。
で、おばあちゃんを尊敬しているとかいうパターンかな。
え? おばあちゃんには会ったことないの?
会ったことないおばあちゃんの話しちゃうのね。
そうだよね、それじゃすぐネタ切れになるよね。

ああ、自分の長所語り始めちゃった。
笑顔に自信ありね。
そうでしょうとも。

ていうか、最初の部活の話何だったの?
志望理由はどこ行った?


読み終えて、若い先生、ため息一つ。
ふう…。

目の前には、不安げな表情の生徒さん。
こっちのことばを待っています。

ふう…。

さて、
皆さんなら、ドウスル?

生徒の文章を諦めるな


結論から言うと
まずは、生徒を褒めましょう!

どこを?
そんなことは自分で考えてください。
なんでもいいんです。

字がきれいだね、とか。
段落をきちんと分けてるね、とか。
具体例があってわかりやすいね、とか。
文末が統一しているね、とか。
気持ちがこもっているね、とか。



先生っていう人たちは、すぐに直したがりますからね。

ここがダメ。
ここはもっとこうした方がいい。
どうしてこんなこと書いたの?
ちゃんと問題文読んでる?



ダメなところを指摘していったら、キリがありません。
どんなに素晴らしい文章にも、手直しする余地は必ずありますから。

ましてや、書くのが苦手だという「普通の生徒」さんの文章です。直しどころ満載に決まってるじゃないですか。

それをいきなり指摘しても、なんにも生まれません。ただただテンションが下がって、それで終わりです。

そこをそのように直す意味をしっかりと理解して、自分の文章を今よりも一つ上のステージに上げようという前向きで強い意志を持った優秀な生徒ならばそれでいいでしょう。

しかし、今われわれがターゲットにしている「普通の子」は、そういうわけにはいきません。ダメ出し、手直し、書き直しの無限ループには決して耐えられないのです。
その先生の、その指摘がどんなに正しかったとしても、まったく意味がありません。そのメッセージは、永遠にその子には届かない。

手直しすべき箇所があっても、その子には無理です。それは、その子にとってかなりハイレベルな次元のことなんですね。おそらく、それは、その子の手には負えません。少なくとも、今は。

誰だって異次元のミッションには応えられるものではないのです。


だから、
まず、褒めましょう!

だって、がんばって書いたんですよ。

おそらくは、小学校の頃からずっと作文は苦手だったんです。遠足の作文なんて地獄の苦しみでした。日記だって長続きしたことなんかない。漢字はいつも間違えてばっかり。言葉も知らない。自分の文章にまるで自信がないんです。

それなのに、昨日の夜、3時間もかけてがんばって書いたんですよ。考えて考えて、何とか600字埋めてきたんです。本当はこんなもの書きたくないんですよ。文章の出来はさておき、今までこんなに書いたことはありません。快挙なんです!


まずは、そこをわかってあげなきゃ。
褒めてやってください。
先はまだまだ長いんです。焦ってはいけません。テクニカルなことなんて今はまだいらないんです
とにかく頑張って書いてきたという姿勢を高く評価してください。

そうしたコミュニケーションをとおして、徐々にその子との信頼関係を築いていく
そういうスタートを切ることがでことができれば、まずは上出来だと思います。

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

コメント

コメント一覧 (2件)

  • […] 以前の投稿の中で、添削に困ってしまう文章の例をあげました。→以前の投稿「志望動機」というテーマなのに、まったく志望動機が書かれていないというタイプの文章です。こういう文章を見ると、どう直そうかと悩んでしまいます。段落ごとに手直しが必要だし、段落ごとのつながりにも問題があるし、そもそもこのままだと志望理由が伝わらない。もう、全部書き直し!って言いたくなります。その方が早そうだし。まず最初に志望理由を簡単に書いて。その次にそう思うようになったきっかけを書こうか。そう、具体例も入れてね。次の段落には将来のビジョンを書こう。つまり、どんな看護師になりたいか、どんな働きをしたいかってこと。そのあとに、自己PRも入れられたら入れようか。自分の長所を述べて、それが看護の仕事に役立つと思うといった感じでつなげて。最後に、志望校に入りたい思いを書いてまとめよう。こんな感じで書き直してみてね。なんか一方的ですけども、こういう指導も場合によってはありですよね。忙しい時なんかはついこういう対応をしてしまいます。生徒によってはこうしてもらった方が手っ取り早くていいと思っている子もいますしね。あんまり丁寧だとウザがられちゃう。小論文を入試科目にしているけどそんなに重要度は高くないといった学校を受験するケースならばこういう対応になりがちです。地元の専門学校とか、生徒募集に苦しんでいる私立大学とか。小論文は入試結果に大きく関わらないだろうということを生徒もなんとなく感じてますしね。小論文の実質的なウエイトがあまり高くないだろうというケースです。で、実際そうなんですよね。だから、ほとんどの場合試験には合格しますし、万が一不合格でも小論文のせいだとは思わない。そういう状況ならば、先生も小論指導を簡単に済ませたいと思う。いたって普通のことです。先生ってホント忙しいからね。しょうがない。 […]

  • […] さてさて、生徒さんが書いてきた小論文を一緒に見ていきましょう。コツは、いちいち驚いたり、がっかりしたりしないこと。文章の体をなしていないことなんか大前提です。書いてきた中身を検討していきます。何を書いてきたか。そこに何かヒントが隠されているはずです。ここでもう一度以前の投稿で紹介した生徒の例に登場してもらいます。添削に困ってしまう文章例です。 → 以前の投稿 […]

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