13 売れ筋の小論文参考書

E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。

小論文の参考書ってたくさんありますね。どれを選べばいいのか迷ってしまいます。今回は人気の高い小論文参考書について私見を述べますね。Amazonや楽天booksなどでよく売れてる本や、ネット上で評価の高い本などを数点あげてみました。

 



目次

『落とされない小論文』
 今道琢也

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★★☆
先生におススメ ★★★☆☆
生徒におススメ ★★★☆☆

この本はずいぶん売れてるみたいですよ。
どのサイトを見ても必ず上位にあがってます。

大学入試はもちろんのこと、看護学校や公務員試験など小論文や面接がある受験全般に対応しているということですね。
その辺が魅力なんでしょうかね。

著者は元NHKアナウンサーの今道琢也先生。
大阪大学に合格した翌年に再受験して京都大学と慶應義塾大学に合格したらしいですよ。
大阪大学じゃダメだったんでしょうかね。 
すごい人だね。
NHKの入社試験も一発合格ですって。すばらしい。
で、2014年から独立して「ウエブ小論文塾」を開校したということです。

この本の面白いところはアプローチの仕方ですかね。

普通は「小論文はこう書け!」っていうことを教えるじゃないですか。
いい文章を書くにはこれをしなさい! 
そういうベクトルで話を進めていく。
それが普通。

でも、この本は違います。
合格するためには「これはするな!」ということを説明していくんですね。
「してはいけない」項目が12個もあります。

だから、まずはある程度小論文が書けるようになることが前提になりますかね。
だって、「してはいけない」ことを書かないように気をつけて書くってけっこう難しいことですからね。
ましてや初心者が最初からそんなことできるわけがありません。

だから、まず小論文を書いてみる。
そして、自分が書いた小論文を振り返って「してはいけない」項目に当てはまるものがないかチェックしていく。
それで、自分の癖や間違い方の傾向を把握し、それを修正していく。

そういう使い方でしょうね。この本は。
使い方によってはいい参考書だと思います。

『採点者の心をつかむ合格する小論文』 中塚光之介

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★★☆
先生におススメ ★★★☆☆
生徒におススメ ★★★★☆

この本のいいところは、わかりやすいという点ですね。

ハイレベルの小論文を書くということであれば、これだけだと多少物足りない点は否めませんが、大多数の受験生には参考になる点が多いんじゃないかなと思います。

小論文を書く上で必要なことは何か。
これをすべて説明していったら大変な分量になってしまいます。
それらを網羅的に解説していくのはあまり現実的じゃありません。
人によって、あるいは受験する大学によって大切な観点ていうのも変わってきますしね。

だから、参考書を書く人はある程度ターゲットを絞ってます。
それで説明する内容を限定して、できるだけわかりやすく解説していく。

そうした方法が非常にうまくいっている本なんだと思います。

この本では小論文を書く上で必要なことを3点にまとめています。
読解法①・読解法②・読解法③

簡単にまとめると、問題意識を共有した上で、自分の体験にあてはめて書いていく。

そうしたシンプルな方法論です。
これを答案例をまじえながら説明してくれていますので、とてもわかりやすい。

その答案例も、これでいいのかな? っていうくらいわかりやすい文章です。
だから、これなら自分にも書けるかもって思えるんですよね。

もちろん、こうしたレベルのことができるようになった上で少しでも高度な文章を目指すということなんでしょうが。

小論文の入門編としてはとてもよくできた参考書だと思います。

『小論文のオキテ55』
 鈴木鋭智

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★★☆
先生におススメ ★★☆☆☆
生徒におススメ ★★☆☆☆

この本は使い方次第という感じがしますね。

もちろんいい参考書ですよ。
分かりやすいし、書いていることも的を射ていることばかりです。

ただし、「オキテ」が55個もあるんですよね。
これを1個目から順番にマスターしていこうなんて考えると失敗すると思います。

でも、初心者は得てしてそういうことをしちゃいがちなんですよね。
それでオキテの10くらいで力尽きちゃう。

そうならないようにしたいですね

だから、まずは小論文を書く。
そして書きながら、わからないことが出てきたときに、その内容に合った項目を探して参考にする。
そういう使い方になると思います。

それで、書いた小論文を学校の先生や塾の先生に添削してもらうのがいいでしょう。

著者が書いているように、この本は小論文の入門書として書かれたものです。
ですから、独学で何とかしようとは思わない方がいいですね。
この本を参考にしながら小論文を書き、誰かのアドバイスを受ける。

そんな感じで練習するのがいいでしょう。

『吉岡のなるほど小論文』
 吉岡友治

《おススメ度》
読みやすさ    ★★★☆☆
先生におススメ ★★★★☆
生徒におススメ ★★★☆☆

とてもよい参考書です。
これは上級者向けですね。

小論文がうまく書けなくて苦労している高校生がいて、その生徒が講師の吉岡先生にいろんな質問をしていく。
そんな形式で話が進んでいきます。
初心者に向けてわかりやすく説明していくという体裁にはなっているんですけどね。

質問する内容が高度だし、講師の説明を聞いただけで生徒は理解しちゃうんですよ。
実際の高校生(特に文章力の高くない生徒)はこんなにうまくはいかないよ!って突っ込みたくなります。

この本に出てくるのはけっこう優秀な生徒ですね。
これくらいの理解力があるならば、この本の解説にはついていけるでしょうね。
だから、そこそこの大学を受験するようなレベルの生徒が読むにはとてもいい参考書だと思います。

逆にいうと、そうじゃない子は手を出さない方がいいかな。
たぶん、第三講くらいでギブアップすると思いますよ。
初心者はもっと基礎的な内容に特化した参考書を選ぶべきです。

ただし、普通の生徒にはお勧めしにくいのですが、先生は読んでおいて損はないと思います。
ここに書いてある方法論は確かなものだと思いますし、ハイレベルの大学受験指導をするのならばとても勉強になると思います。

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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