⑩『小論文書き方と考え方』 大堀精一

 



前回の投稿「先生が読むべき小論文参考書3選」で取り上げた参考書の補足解説です。興味のある方はぜひご一読ください。

目次

小論文書き方と考え方 大堀精一

  

この本では自分の考えを構築するための方法とそれを表現する方法を学ぶことができます。

小論文を書くには社会状況に関する基本的な知識が必要です。
これがまったく持ち合わせていないような状態ではまともな文章を書くことはできない。
しかし主要な社会問題と言ってもたくさんあります。
それらを網羅的に学ぶというのはあまり現実的ではない。幅広い知識が必要だと言っても時間と能力の限界がありますからね。

そこで全国の大学入試小論文の傾向をリサーチしてみましょうと。
そうするとその時代のトレンドになっているテーマが見えてくる。

そうしたテーマを題材にしながら社会問題に対する考え方をレクチャーしていきます。

基本的な考え方は「二項対立」です。
まず、その社会問題に関して常識とされているような考えがあります。
これを盲目的に受け入れてしまっている状況が実際にはある。

でも、よくよく考えてみると何か変だなという側面が見えてくる。 
これが筆者のいう「異和感」。
この「異和感」に注目していく。

この「異和感」は、社会問題に対する自分なりの切り口になっていきます。
これを掘り下げていくことで「自分の考え」が徐々に形になっていくわけですね。

この本ではこうした一連の思考の流れを「基本パターン」という形で整理してくれています。
このフォーマットを使って自分の考えを文章化していく。

で、実際にどのように考えていけばいいかということを、実際の入試問題を使って具体的に説明してくれています。

本当の入試問題を使っていますから内容は難しいんですよね。
考えなきゃいけないポイントも複数出てきますし。

だからこの本は一見すると難しそうにみえちゃうんですけどね。

でも、思考の「基本パターン」を使っていくつかの入試問題を実際に解いてみるということを繰り返しているだけなので、実際にはとてもシンプルな構成になっています。

ただし、この本が対象としているのはやはりある一定レベル以上の大学を目指している生徒でしょうね。
だから、要求している水準も高くなっていきます。
どうしても細かい内容に踏み込む場面も出てきますからね。

まあ、その辺は必要に応じて取捨選択していけばいいんじゃないかな。
難関大受験の生徒じゃなくても「基本パターン」の考え方などはとても有用ですからね。

この本の指導に沿って小論文を書くことができれば、世の中の社会問題に対してしっかりと向き合うことのできるマインドと行動力をもった生徒であることをしっかりとアピールすることができるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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