作戦3:生徒に語らせ、ストーリーを考えていく
先の小論文例に戻ります。
最初に部活のことを書いたのは、その子がこの3年間いちばんがんばってきたことだからかもしれませんね。
どういうがんばりをしたんでしょうね。
この辺は探りどころ満載です。
あの手この手で質問をしながら、その子の根っこの部分を探っていきます。
質問はシンプルに。
できるだけ生徒に話させましょう。
楽しく、和気あいあいとコミュニケーションをとってください。
生徒が心を開けるように。
もう、これはカウンセリングの領域と言ってもいいですよね。
実際、そんな感じでやってます。
バレー部のキャプテンという「経験」は、もうそれだけですごいことです。
その部活が強かろうが、一回戦敗退だろうが、関係ありません。
そのチームのキャプテンとして、いろんなことを学んだはずです。
例えば「みんなの協力があったから最後までがんばることができた」という思いをその子が強く持っていたとします。
これはその言葉だけ見るとありきたりの感想のように聞こえるかもしれません。
「みんなで協力」は、小さいころから教え込まされてますからね。誰でも。
でも、バレー部のキャプテンという重責を担い、そのチームのために全力をささげてきたという「経験」に裏打ちされたこの言葉は、紛れもなく「本心」から出たものです。
この子は、みんなで協力することの大切さを本心から感じている。
キャプテンだけががんばっているわけじゃない。レギュラーメンバーも、補欠の人たちも、マネージャーも、応援してくれる仲間たちも、みんなの力があってここまでやってこれた。
これが「本当にそう思う」という実感です。
こういうことを学んだ人は、この先の様々な場面においても、「みんなで協力」の重要性を忘れないでしょう。行動基準の最重要点になっていくのではないでしょうか。
そういう人が語る「みんなで協力」には、「説得力」があります。
「説得力」というのを論理ゲームのように考えている人もいるかもしれません。
論理構成を重視するタイプの入試形態もありますからね。
でも、それはかなりハイレベルの話なので。
高校生が持ちうる「説得力」って、「本当にそう思う」という気持ちがないと生まれないと思います。だから、思ってもいないことをそれっぽく書いている小論文はすぐにばれます。
たとえば、医療の現場で「チーム医療」が大切だということを述べるとき、まだ現場経験もない高校生がその重要性を、どのような観点で実感しているか。
医療に関する知識を養うことも重要ですが、自分のこれまでの経験に根差したところから発信することができれば、「チーム医療が大切だ」という思いが本心から出たものであることが伝わりやすくなるはずです。
もちろん、部活動と医療活動とを一緒に考えることはできません。
でも、抽象化したときに重要となるマインドは共通してますよね。
それはどんな職場でも、どんな集合体でも同じことが言えるんじゃないでしょうか。
「みんなで協力することが大事」
でも、こうした「ストーリー」を生徒自身が自分の力で考えるのは難しいですよね。
だから、先生とのカウンセリングが必要なんです。
こうしたやりとりを通して、自分の行動指針になっている考えの一つが「みんなで協力」にあったんだということを自分自身で納得したならば、この「ストーリー」を受け入れることができる。それを自分の「柱」にしていくという方向が見えてくるでしょう。
こうしたストーリーは、先生が提案することになります。
生徒はそのストーリーに同意しないかもしれません。なんか違うなと。
ならば、別のストーリーを考えていくしかありません。
このストーリーが「先生の押しつけ」にならないようにするためには、ストーリーを構成する「材料」が100%生徒から出てきたものでなければなりません。
だから、最初に書いてもらう小論文で、できるだけたくさんのことを書いてほしいんです。
書けない場合でも、話し合いながら「材料」を集めていきます。
「材料」をうまく調理するのが先生の仕事です。
先生の押し付けにならないように慎重にいきましょう。
これが「作戦会議」です。
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コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 材料集めの基本的な考え方は、カウンセリング編でお話ししました。→わくわく小論文作戦会議ーカウンセリング編ー今回はその続きになります。生徒が「自分ストーリー」をつくっていくときには、先生の存在が欠かせません。まあ、ひと通りの説明を聞いただけで自分でできちゃう優秀な生徒ももちろんいますけど、わたしのブログではそうじゃない生徒を前提にしてますので。ふつうの子ならば、やはり先生といっしょに取り組むのがいいと思います。ここでは、先生の重要な役割についてお話します。が、その前に、注意しなければならないこともありますので、その点を先に指摘しておきたいと思います。 […]
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