E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。
いよいよ「自分ストーリー」作成の具体的方法に入ります。まずは「材料」集めですね。しかし、どうやったら「材料」を集めることができるのでしょうか。そもそも「自分ストーリー」を構成できるほどの「材料」があるのかどうか。なんとか「材料」を掘り起こす方法を考えていきましょう。
材料集めの基本的な考え方は、カウンセリング編でお話ししました。→わくわく小論文作戦会議ーカウンセリング編ー
今回はその続きになります。
生徒が「自分ストーリー」をつくっていくときには、先生の存在が欠かせません。まあ、ひと通りの説明を聞いただけで自分でできちゃう優秀な生徒ももちろんいますけど、わたしのブログではそうじゃない生徒を前提にしてますので。ふつうの子ならば、やはり先生といっしょに取り組むのがいいと思います。
ここでは、先生の重要な役割についてお話します。が、その前に、注意しなければならないこともありますので、その点を先に指摘しておきたいと思います。
生徒の言葉を先回りするな
「自分ストーリー」をつくるためには、まずその元となる「材料」が必要になります。この「材料」は生徒自身が用意するしかありません。これは当たり前のことに聞こえますよね。だって自分物語をつくるんですから。他人からの借り物で作るわけにはいかない。
それなのに、先生がそれを邪魔してしまうようなことがときどき生じてしまう。生徒の「自分ストーリー」をつくるお手伝いをしているはずの先生が、です。
先生は「材料あつめ」のために生徒の話を一生懸命聞いているんだけど、生徒がなかなか「材料」を出してくれない。そんなことはよくあります。だって自分のこととはいってもそんな簡単にポンポン出せるものではありませんからね。誰だって時間がかかってしまう。それはごく普通のことです。
でも、先生は忙しいからそういうときにしびれをきらしちゃうんですね。で、「こんなこととかなかった?」とか「それはこういうことなんじゃないの?」とか「そのときはこんな気持ちだったんじゃないかな?」っていう感じで生徒の言葉を先回りしちゃう。しかもかなり勇み足気味で。いつ出てくるのかわからないような生徒の言葉をじっと待てるほど時間も精神力もないんですよね、先生って。これは仕方がないとは思うんですけど…。
それで、せっかく材料を集めても、なんだか先生のつくったストーリーみたくなっちゃって、それはそれでつじつまはあってるから悪くはないんだけど、生徒としてはなんかしっくりこないなと。なんか「自分の物語」ではないような…。
こうなってしまうと元も子もない。けっきょくは先生の指示通りに書くっていうことになっちゃうので。これじゃ自分で歩く力はつきませんよね。でも、けっこうやっちゃうんです。これはホントに気をつけなきゃいけません。「自分ストーリー」作成のための最大の協力者であるはずの先生が、結果としてそれを阻害してしまう。そんなことにはならないように。
「自分ストーリー」の枠組みを提案
「自分ストーリー」をつくるためには、生徒とたくさんコミュニケーションをとる必要があります。話のネタは何でもいいのですが、まずは生徒に書いてきてもらった志望動機なんかがちょうどいいのではないでしょうか。で、それを読みながらいろんな話をするわけです。生徒の話を聞いていく中で、いくつかの「材料」が上がってきますよね。志望するに至ったきっかけとか、その職業のどこに魅力を感じるかとか、その学校を選んだ理由とか、高校時代のことや中学時代のこと、部活やら習い事やら趣味やら家族のことやら。
いろいろ話を聞いていく中で、その子の興味や関心がどこにあるのかとか、行動の指針になっている考え方とか、譲れない思いとかそういうのがぼんやりと見えてくるでしょう。
その時、先生はストーリーを構成する作家のような立ち位置になります。生徒の話から出てきた「材料」を使って一つの物語に仕上げていく。その際、次の点に注意を払うことになります。
- その物語は、事実に基づいていなければならない。
- その物語は、生徒の「人物」をよく表しているものでなければならない。
- その物語は、生徒本人の納得・理解を得られるものでなければならない。
- その物語は、小論文を書くための土台になり得るものでなければならない。
こういう物語は、生徒本人にはなかなか作れません。もちろん作れる子も中にはいますが、ほとんどの生徒にとっては難しいことです。自分は何者なのかということを常日頃から意識しているならば別ですが、ふつうはそんなことを考えたりはしない。だから、「自分の性質」とか「自分の特徴」とか「アイデンティティ」とか聞かれてもうまく答えられない。これはいたって普通のことだと思います。
こんな感じなので、やっぱり先生の存在って重要だなあと思います。
生徒は自分の物語を自力でつくることはできない。というか、作る方法を知らない。知らないのは勉強が足りないとか怠けていたからだとかいうのではなく、知らないのが普通のことなんですね。
だからある程度は導いてやらないといけないというのがわたしの考えです。どこまで手を引っ張てあげる必要があるかと言えば、「自分ストーリー」がひとつの形になるまで。ここまではいっしょに伴走してあげる必要があるんじゃないかなと思っています。


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[…] 「自分ストーリー」の「材料」はどこにある? 生徒と一緒に「材料」を… […]