E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。
生徒の書いてきた小論文。アドバイスに困ることって多いですよね。生徒の文章を一緒にふり返るとき、どんな点に注目するのがよいか。そんなことをお話ししたいと思います。前回の投稿「作戦1」と合わせて読んでいただけたら幸いです。
作戦2:書いた小論文をいっしょにふり返る
さてさて、生徒さんが書いてきた小論文を一緒に見ていきましょう。
コツは、いちいち驚いたり、がっかりしたりしないこと。文章の体をなしていないことなんか大前提です。書いてきた中身を検討していきます。何を書いてきたか。そこに何かヒントが隠されているはずです。
ここでもう一度以前の投稿で紹介した生徒の例に登場してもらいます。添削に困ってしまう文章例です。 → 以前の投稿

テーマは「志望動機」です。
○○大学看護学科の推薦入試小論文。難易度はそう高くはないというケースです。
この子が書いてきた内容を箇条書きにすると
1、部活動のこと
2、おばあちゃんのこと
3、自分の長所について
こんな感じです。
志望動機というテーマなのに、まるで核心に迫っていない。
なぜこうなったか。
何を書けばいいのかわからない。
こんなところでしょう。
でも大事なのはここからです。
何を書けばいいかわからない状態でこれを書いてきた。
おそらくは今の自分に書ける最大限の内容をチョイスしてきたわけです。
ここに伝えたい内容の入り口があるはずです。
この子が何を表現したいのか。
今の段階では自分自身でもわかっていません。
漠然と思っていることがあちこちにふわふわと浮かんでいるような感じで、興味や関心や将来目指す方向みたいなものがないわけではないけど、うまく整理できていない。だから、両親や先生に進路希望を聞かれても、強い意志を持って「どうしてもここに進学したい!」と言えない。そこに進学したいという気持ちに間違いはないけど、それをちゃんと説明できない。親や先生に責められているうちになんだか志望校への気持ちも揺らいできてしまう。そんな自分を情けなく思う。
でも、そこに進学したい。
うまく言えないけど。
意志薄弱で頼りなく見えますが、ほとんどの高校生はこんな感じじゃないですか。
ちゃんと喋れる子もいますよ。もちろん。
でも、まだ社会のことをよく知らない高校生が、本やニュースで聞きかじっただけの知識だけで自分の将来のビジョンを決めたとしても、そこに何の疑いも感じずにいられるものでしょうか。
うまく喋れる子も喋れない子も、みんな不安なんです。
自信なんかあるわけがない。

だから、「土台づくり」が肝心なんです。
土台とは、自分という人間の拠り所です。
自分の「根っこ」にある気持ち。「信念」と言ってもいいかもしれません。
わたしはこれを「柱」と呼んでいます。
この「柱」をつくることの重要性を生徒にまず伝えます。
自分の「柱」をまず作ろう。
じゃないと文章は書けないから。
自分の「柱」は、自分が「本当にそう思う」という気持ちからしか作れません。
誰かの入れ知恵や聞きかじった知識だけでは作れない。
「本当にそう思う」という気持ちは、これまで生きてきた「経験」の中からしか作れない。
家庭や学校や習い事など様々な「経験」をしてきた中で、自分が「大切に感じてきたこ」とって誰しもが持っているはずです。
「経験」から学んだことは、知らず知らずのうちにその人の「根っこ」を構成しているはずです。
それがその人の生きる指針になって、今日まで過ごしてきている。
でもそういうことを特別に意識してこれまで過ごしてきたわけではないんですね。自分の周りのどこかにふわふわと漂っている感じといったらいいでしょうか。
それを意識化していこうというわけです。
自分が大切にしてきたことって何だろうか。
これだけは譲れないという思いはあるか。
自分の行動基準になっているような考えはあるだろうか。
これを生徒と一緒に探っていきましょう。
そうすると、添削に困る小論文も、その子の「根っこ」を探る情報の宝庫になるはずです。


コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 材料集めの基本的な考え方は、カウンセリング編でお話ししました。→わくわく小論文作戦会議ーカウンセリング編ー今回はその続きになります。生徒が「自分ストーリー」をつくっていくときには、先生の存在が欠かせません。まあ、ひと通りの説明を聞いただけで自分でできちゃう優秀な生徒ももちろんいますけど、わたしのブログではそうじゃない生徒を前提にしてますので。ふつうの子ならば、やはり先生といっしょに取り組むのがいいと思います。ここでは、先生の重要な役割についてお話します。が、その前に、注意しなければならないこともありますので、その点を先に指摘しておきたいと思います。 […]
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