③小論文指導は何のため?完成度より納得度

E-roomへようこそ。このブログでは、学校現場における小論文指導の現実について、学校の先生を対象にゆるーく語っていきます。バックナンバーと合わせてお楽しみください。

大学入試が間近に迫ってきて生徒の小論文指導に明け暮れているとき、ふと虚しくなることはありませんか。学校の先生の仕事って受験のためだけにあるわけじゃないのに…。小論文指導において目指すべき方向性について、ゆるーく考えていきます。

 



目次

小論指導のゴールは?

前回の投稿で「信頼関係」について触れました。

信頼関係
めちゃくちゃ大事ですね。
これがなかったらほとんど前に進めません。

まあ、信頼関係が大事っていうのは、当たり前っちゃア、当たり前のことですけどね。
別に小論文指導に限ったことじゃありません。

授業を通しての先生と生徒との信頼関係。部活でのコーチと選手の信頼関係。職場での上司と部下の信頼関係。人と人とが関わる場であれば、大概は必要とされることですよね。
信頼関係がなければ、生徒はこっちを信用してくれません。
当たり前だなあ。

逆にいうと、信頼関係さえあれば、信用してくれる。
これも当たり前。
でも、この当たり前が難しいんですよね。

こっちがどんなに頑張っても、まったく信頼されないなんてことは多々ありますからね。
本当に、信頼関係って、どうすれば築けるんですかね。

まあ、そんな難しいことはおいおい考えるとして、次に行きましょう。


とりあえず、信頼関係的なものができ始めたという前提でいきましょう。
その上で、先生としては今後どういう方向を目指すべきなのでしょうか。

もちろん、いい小論文が書けるようになること。
これが、目指すべきゴール。
のような気がします。

本当かな?

まあ、間違いではないですよね。そのために、文章を書く練習をしているんだから。

でも、「いい小論文」っていったい何でしょうね。

大学に受けのいい小論文?


仮に、「いい小論文」が書けるようになったとして、
でも、受験には失敗した。


これは? あり?

いやあ、小論文は上手にかけたんだけどなあ。
それでも不合格だったかあ。
残念だったなあ。
でも、いい小論文は書けたよね。
うん、うん。小論文はよかった。



こんなこと言われても、生徒はちっともうれしくないですよね。
生徒にしてみれば、目的は大学に合格することであって、小論文が上達するっていうのはそのための手段に過ぎないんですから。

そもそも、大学側は、それを「いい小論文」とは判定しなかったんだろうし。
だれが、それを「いい小論文」と判定するか。
これはかなり重要な観点です。

受験指導の枠組みの中で考えるのならば、それはもちろん大学側の判定がすべてです。
どんなに素晴らしい文章が書けたと思っても、大学側のニーズに合っていなければ不合格です。
それは「いい小論文」ではない。

だから、合格するためには、その大学のアドミッションポリシーを頭に叩き込み、教授陣の実績や、履修できる講座内容などをよくよく調べ、その大学が求めている生徒像に沿った形で自分を作り上げていくこと。こうしたことは当然必要になります。


じゃあ、
大学側が求めるような小論文を書けるようになること。
これがゴール?


うーん。
でも、これがゴールだったら、嫌だなあ。

もちろん、合格させたいけどね。それはあくまで副次的なことであってほしいな。

テストの点数とか、模試の成績とか、大学入試とかそういう「数字」で測れる評価って、
ほんとうはあまり好きじゃないんだよね。
大半の先生はそうだと思うよ。何か評価出さなきゃいけないから仕方なくやってるようなもんで。

じゃあ、テストでは測れない能力を数値化しましょう! とか言っちゃうんだよね。
文科省の人が考えるんでしょ。
主体性を評価しましょうとかってね。

何を考えてるんだか。
まあ、この話はそのうちに。

生徒の納得度を高める


話を戻しましょう。
わたしたちが目指すべきゴールはどこなのか。

それは、生徒の納得度だと思います。

小論文とはどういうものなのか。
何を書くべきなのか。
どのように書くべきなのか。
合格するためには何が必要なのか。

こうしたことが、理屈としてわかっているかどうかがとても重要だと思います。

なんだ、また、当たり前のことか。
そんな声が聞こえてきそうです。

でも、これってめちゃくちゃ難しいですよ。
小論文とはなにかということを、ちゃんと伝えて、ちゃんと理解させること。
これは、信頼関係がなければできません。

なるほど、小論文っていうのはこういうことが書けるようになればいいんだな。じゃあ自分の場合はこういう観点でここを掘り下げていけばいいかな。そのためにはこういう知識が必要だな。このテーマについてはどういうアプローチができるかな。○○大学の△△学部を受験するなら、ここの部分をもっと深掘りした方がいいかも。

こんなふうに考えられるようになったからと言って実際に「いい小論文」が書けるかどうかはわかりません。理屈はわかったけど、文章自体はうまく書けなかったということもあると思います。

でも、大事なのは、文章の完成度ではない。だって、完成度って、キリがないから。

それよりも、生徒自身が、何をすべきかということがわかっている状態になること。
目指すべきゴールのイメージを持つことができれば、あとは自分の問題としてとらえられます。
だから、仮に、思ったように書けなかったとしても、不合格になったとしても、納得できます

どこに向かって走ればいいのか。これがわかった生徒は強いです。
ブレることなく、自分を表現しようとします

こうして生徒が自力飛行ができるようになるまで伴走すること、これが先生の役割だと思います。
そして、それができるようになるためには、信頼関係がどうしても必要なんです。


この信頼関係を築くっていうのが簡単なことではないので、
小論指導は、うまくいったり、うまくいかなかったりするんですよね。


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この記事を書いた人

1968年生まれ
東京学芸大学大学院修了
函館市私立学校に30年勤務
小論文を中心に指導

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